目を閉じよ。そしたらお前は見えるだろう。
サムエル・バトラー耳に聴こえるメロディーは美しい。だが聴こえないメロディーはさらに美しい。
ジョン・キーツ
共感覚という言葉をご存知ですか?ある刺激を受けたとき、本来の感覚に他の感覚が伴って生ずる現象を指す言葉です。印刷された言葉や数字が色となって感じられたり、香りが形を伴ったり、話し言葉が虹色に見えたり。。。単なる連想記憶とはまた違って、刺激を直接複数の感覚として感じる現象のことです。誰しも赤ちゃんの時には共感覚を持っているものの、成長と共に失われるという説もあるそうです。
私自身はたまたま立ち寄ったブログ(小さな哲学〜雑草の世界)で知ったのですが、これを見て最近TV番組で見た、色を音で認識する機械をつけた美大生の話を思い出しましたので紹介したいと思います。
その青年、Neil Harbissonは重度の色覚障害のため、全てが白黒の世界で生活していました。しかし、アイ・ボーグ(Eye-Borg)と呼ばれる機械によって彼の世界は豊かな色を取り戻します。彼に色を取り戻させたアイ・ボーグは、色を音に変換する装置です。具体的には、色に応じた音を発生させるのです。赤なら低い音、青なら高い音。彼は、この機械によって、色を認識することができるようになり、色彩豊かな絵を書けるようになったのです。(BBCの参考記事)この「色を音で感じる」というのは魅力的な響きを持っており、何となくロマンチックなイメージを掻き立てもします。さわやかな色に静かな音楽、鮮やかな色彩に賑やかな音楽。。。しかし、実際のアイ・ボーグを通じて色を見た時に耳に届く音は、無機質な電子音でしかありません。そこには、私たちが美しいと感じる音色はありません。
感覚というのは主観的なものです。同じ刺激に対して、誰しもが同じように感じているという保障はありません。実際、人によって美しいと感じる基準は異なります。見方を変えれば、あるものを美しいという感じるための刺激が、人によって異なるというようにも考えられます。そう考えれば、先のアイ・ボーグの場合、私たちにとっては無機質な電子音にすぎないアイ・ボーグが生成する音も、Neilさんにとっては豊かな色彩となって知覚されているのでしょう。
考えても見れば目で色を感じるのも所詮は脳に届けられる段階では所詮ただの電気刺激。舌で物を見ようという研究もあるくらいです(参考:舌で物が見えるようにする感覚代行器具)。ただ、このような特殊な感覚に対しては、どうしても人とは違う感性をもっているんだろうなという眼で見てしまいがちです。
しかし、これらの話を知って思ったのは、最初の共感覚にせよ、アイ・ボーグの話にせよ、どのような形で知覚するかといのは実はあまり重要ではないのではということ。「どうやって感じるか」ではなく「何を感じるか」。HOWではなくWAHT。最後の最後、心で感じているイメージは誰しも変わらないのではないでしょうか。
【関連リンク】
・Seeing things in a different light (BBC)・共感覚 (小さな哲学〜雑草の世界)
・ママの声って何色 (asahi.com)
・言葉や音に色が見える――共感覚の世界
・N2's Homepage! 共感覚
・舌で物が見えるようにする感覚代行器具
【関連書籍】
・ユーザーイリュージョン―意識という幻想 Tor Norretranders
・ねこは青、子ねこは黄緑―共感覚者が自ら語る不思議な世界
・共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人
・奇跡の人 ヘレン・ケラー自伝
この記事へのコメント
TBありがとうございました。
ぼくも、自分の記事を書いたあと、
「ママの声って何色」を読みました。
ぼくも、自分の記事を書いたあと、
「ママの声って何色」を読みました。
TBありがとうございます。大変勉強になりました。私が読んだ記事はあまり詳しく書いていなかったので、もう少し掘り下げて学んでみたいと思っていたところだったので。
共感覚が大人になっても残っていることは、本当は辛いことなのかな、とも考えたりしていますが。深く学んでみる価値は充分ありますね。
共感覚が大人になっても残っていることは、本当は辛いことなのかな、とも考えたりしていますが。深く学んでみる価値は充分ありますね。
2005/10/11 (火) 22:26:54 | URL | かりん #-[ 編集]
enzianさん、かりんさん、コメントありがとうございます。
確かに、「他の人とは違う」ということで共感覚が辛いと感じる人もいるのかもしれません。でも、Neilさんの話で思うのは、「どうやって感じるか」ではなくて、「何を感じるか」が重要なんだなと。
確かに、「他の人とは違う」ということで共感覚が辛いと感じる人もいるのかもしれません。でも、Neilさんの話で思うのは、「どうやって感じるか」ではなくて、「何を感じるか」が重要なんだなと。
初めまして、N2と申します。
私は共感覚に関心があり、自分のHPに共感覚コーナーを設けていますが、このアイボーグの記事は大変興味深く読ませていただきました。とりあえず、私の掲示板で紹介させていただきました(HPにも載せたいと思います)
私のHPにいらっしゃる共感覚者の中には、共感覚が辛いという方が確かにいらっしゃいます。周囲の無理解にあって誤解され、孤立する辛さ。そして、共感覚による感覚には、心地よいものばかりでなく、普通の五感同様に不快なものもある故の辛さ。
ただprogerさんの書かれた「『何を感じるか』が重要」という発言は大変興味深いと思いました。色を見るのに、目でなくて耳で感じてもよい。Neilさんがアイボーグを通して感じた色の世界に感動できるのなら、人間の脳は感覚器の違いさえ調整できる可塑性があるのかも知れません。
私は共感覚に関心があり、自分のHPに共感覚コーナーを設けていますが、このアイボーグの記事は大変興味深く読ませていただきました。とりあえず、私の掲示板で紹介させていただきました(HPにも載せたいと思います)
私のHPにいらっしゃる共感覚者の中には、共感覚が辛いという方が確かにいらっしゃいます。周囲の無理解にあって誤解され、孤立する辛さ。そして、共感覚による感覚には、心地よいものばかりでなく、普通の五感同様に不快なものもある故の辛さ。
ただprogerさんの書かれた「『何を感じるか』が重要」という発言は大変興味深いと思いました。色を見るのに、目でなくて耳で感じてもよい。Neilさんがアイボーグを通して感じた色の世界に感動できるのなら、人間の脳は感覚器の違いさえ調整できる可塑性があるのかも知れません。
>N2さん
コメントありがとうございました。HPも読ませて頂きましたが、共感覚という言葉を知ったばかりで書いたので、非常に参考になりました。共感覚が辛いというのは、おそらく共感覚を持っていない人からすると意外な事実だと思います。「無い」ことによる辛さは分かりやすいですが、「有る」ことによる辛さはなかなか伝わり難いものだなと。
こちらからもリンクさせて頂きました。
コメントありがとうございました。HPも読ませて頂きましたが、共感覚という言葉を知ったばかりで書いたので、非常に参考になりました。共感覚が辛いというのは、おそらく共感覚を持っていない人からすると意外な事実だと思います。「無い」ことによる辛さは分かりやすいですが、「有る」ことによる辛さはなかなか伝わり難いものだなと。
こちらからもリンクさせて頂きました。
progerさん、リンクありがとうございます。また、私のHPにきて頂いたそうで、掲示板にコメント頂き、うれしいです。
共感覚の辛さについては、私も掲示板で共感覚者の声を聞いて、初めて知ったことです。本やネットでの紹介でもほとんど触れられていません。やはり実際の声に耳を傾けることと、色々な発見があります。
ただ共感覚は、辛いこともありますが、総じて楽しい体験だろうと思います。ウチの共感覚者アンケートを見ていただいても、快感がある方が不快感があるよりも上回っています。
共感覚の辛さについては、私も掲示板で共感覚者の声を聞いて、初めて知ったことです。本やネットでの紹介でもほとんど触れられていません。やはり実際の声に耳を傾けることと、色々な発見があります。
ただ共感覚は、辛いこともありますが、総じて楽しい体験だろうと思います。ウチの共感覚者アンケートを見ていただいても、快感がある方が不快感があるよりも上回っています。
共感覚って言葉を知らなくて、ましてや、自分がそうだったと気付かずに、今日まで生活してました。
誰もが、音に色を感じるものだと疑ってなかったからです。
「ギミーヘブン」を見て、友人に「音に色を感じるやろ?そんなの普通じゃん?」と言うと、「普通は、見えない」と言われて気付きました。生活に問題もないし、それは、ぜんぜん不快でもなく、この映画を観なければ、一生気が付かずに過ごしてたと思います。
誰もが、音に色を感じるものだと疑ってなかったからです。
「ギミーヘブン」を見て、友人に「音に色を感じるやろ?そんなの普通じゃん?」と言うと、「普通は、見えない」と言われて気付きました。生活に問題もないし、それは、ぜんぜん不快でもなく、この映画を観なければ、一生気が付かずに過ごしてたと思います。
2005/12/15 (木) 12:24:14 | URL | gon #-[ 編集]
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