イノベーションのジレンマについて考えてみる

偉大な企業はすべてを正しく行うが故に失敗する
クレイトン・クリステンセン - 『イノベーションのジレンマ
任天堂社長「ゲームの敵だったお母さんが買ってくれれば」
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200801030061.html

少し前の記事ですが、任天堂岩田社長がWiiやDSのヒットについて語ったインタビュー記事です。『誰からも嫌われない存在』をねらったDS、そして、『みんなで囲む』というスタイルを提案するWii。なるほど。。高い演算能力やグラフィック性能を進化させたPS3とは、本当に対照的です。
この対比を見るとやはりクリステンセン氏の「イノベーションのジレンマ」の話が頭をよぎります。「イノベーションのジレンマ」とは「顧客の意見に熱心に耳を傾け、新技術への投資を積極的に行い、常に高品質の製品やサービスを提供している業界トップの優良企業が、その優れた経営のために失敗を招き、トップの地位を失ってしまう。」そんな逆説的なコンセプトを論理的に解き明かしたベストセラーです。ブログをはじめ各所で絶賛されたり、引用されたりしていますので、ご存知の方も多いでしょう。詳しくはWebを調べるといろいろと情報が出てきます (例えばこちら)。私も始めて読んだ時は衝撃を覚えました。

さて、今更ですがWiiとPS3の関係をこの「イノベーションのジレンマ」に当てはめて考えて見ます(新しくもないですが)。この場合、いわゆる業界の先端を行っていた優良企業はSONYであり、商品はPlayStationになるでしょう。初代PSからPS2,PS3への高性能化はコアなユーザーニーズの声を真摯に受け止めて、それを実現してきた結果です。そして、それは成功してきました。それに対して、任天堂のDSやWiiは、演算能力で言えば、SONYのPSPやPS3からすると、一世代前になります。技術的にみれば時代遅れの代物です。しかし、DSやWiiには従来とは違う「ユーザーインターフェース」がありました。これも技術的には決して新しいものではありませんが、これをゲーム機としてパッケージングして、それに見合ったソフトとともに世に出してきました。そして、これが今までのゲームユーザーとは違った層に爆発的ヒットにつながりました。まだ、PS3を食い尽くすほどではありませんが、確実に従来のPSユーザーも大勢さらったでしょう。この場合「ユーザーインターフェース」というのが「破壊的イノベーション」の核になっています。

このような状況をして、よく「ゲームの概念を変えた」「ゲームの枠を広げた」という評価のされ方もありますが、個人的には、従来あったものを変えたというよりは、別のものを新たに作り出したという方が正しいと思っています。実際、このまま任天堂商品がPS3の牙城をも飲み込むことはないでしょう。土俵が違います。PS3のような高性能化路線を望むコアなユーザーは大勢いますし、それらのユーザーからみればWiiはおもちゃに見えるでしょう。少なくとも今は。しかし、その性能差が見えない大半の一般ユーザーにとっては、PS2->PS3の連続的変化よりは、PS2->Wiiの不連続な変化の方が刺激的で魅力的なものに見えるでしょう。

4798100234私もゲーム業界ではないですが、大勢の方に使われるような民生機の開発に携わっています。製品を使うお客さんは最新技術に精通した人からお年寄りまで様々です。そんな中、DSやWiiの成功の過程からは学ぶべきことは大変多く、自分達の置かれた状況を考えるに危機感を覚えます。しかしながら、PS3に見るような実直な進化もまた必要な要素ではあります。マスは少なくとも、コアなユーザーの声もやはり重要ですし、とがりをさらにとがらせるということは競争の激しい業界を勝ち抜くためには必要です。問題は、それがお客さんのニーズから薄利して技術競争・開発側の独りよがりにならないことでしょう。

多角的視野と深堀りのバランス、そして既成概念にしばられすぎないこと。改めて自戒をこめて。
イノベーションのジレンマの続編(『イノベーションへの解』、『明日は誰のものか イノベーションの最終解』)も出ているので読んで見ようかな。

【関連書籍】
イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき クレイトン・クリステンセン
イノベーションへの解 収益ある成長に向けて クレイトン・クリステンセン マイケル・レイナー
明日は誰のものか イノベーションの最終解 クレイトン・M・クリステンセン スコット・D・アンソニー
あの商品は、なぜ売れたのか 杉村 貴代
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ニンテンドーDSが売れる理由―ゲームニクスでインターフェースが変わる サイトウ アキヒロ 小野 憲史

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